赤倉山に六十年籠った仙人
どんな伝承か
昭和になっても仙人と呼ばれる人はいた。青森県の岩木山、その赤倉山に籠る荒井万作は、赤倉山の仙人として知られた人である。明治二十三年に山へ入って以来六十年あまり、難行苦行を積み重ねてきた。八十七歳という高齢でありながら足の裏は厚く硬く、厳しい冬の山中でも背筋の伸びたきびきびとした身のこなしを見せたという。一男五女の子をもちながら家を出て入山した人で、自分が死ぬときには亡骸を隠してしまうつもりだと語っていたと伝えられる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本人物語5――秘められた世界(関敬吾(編)・日本人物語)
『日本人物語5――秘められた世界』は、日本人の暮らしの奥にある秘められた信仰や伝承を扱った叢書『日本人物語』の一冊である。境の神や通過儀礼を論じる序論に続き、入らず山や隠れ里、竜宮、平家谷、埋蔵金、生まれ代わり、あの世を見た話、魔法使い、生霊、秘密結社、狐憑きなどを、伝承と昭和三十年代までの新聞記事・見聞を織りまぜて述べる。序論「生活文化の秘密性――はじめに」の後、「奇蹟」「不気味な神々」などの区分の下に短い節を並べる。