賀茂の大路におぼろ夜にきしむ朧車
どんな伝承か
鳥山石燕は『画図・百鬼夜行』に、牛車の前面いっぱいに大きな女の顔が浮かぶ朧車を描き、こう書き添えた。昔、おぼろ月の夜に賀茂の大路で車がきしむ音がしたので、出て見ると異形のものがいた。車争いの恨みが残っていたのだろうか、という。著者は、この無気味な女の顔は夜の星明かりに現れる大首の系譜よりも、『源氏物語』葵の巻に語られる車争いの系譜につながるものだと見ている。
原典より
鳥山石燕自身、「むかし賀茂の大路をおぼろ夜に車のきしる音しけり。出てみれば異形のもの也。車争ひの遺恨にや」と注している。—— にっぽん妖怪の謎(阿部正路・阿部正路・妖怪学・1992年(平成4年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
にっぽん妖怪の謎(阿部正路・阿部正路・妖怪学・1992年(平成4年))
『にっぽん妖怪の謎』は、阿部正路が平成四年に著した日本の妖怪論である。神の零落した姿としての妖怪という見方から、記紀や『今昔物語集』『太平記』、西鶴や『耳袋』、鳥山石燕の画図、近代文学や漫画までを引き、鬼・天狗・河童・狐・蛇・鵼などの出現と変遷を論じる。五章に分け、魔女・妖精・吸血鬼など外国の妖怪を扱う十篇のコラムを挟み、あとがきでは秋田の将軍野に生まれ柳田国男・折口信夫の門流につながる著者の来歴を語る。