正子と牛潟に残る将門の足跡
どんな伝承か
幸若舞曲『信田』で小太郎が売り渡された先とされる津軽の外ヶ浜(青森県の西海岸)には、将門ゆかりと語られる地名が二つ残る。ひとつは正子で、将門がこの地に泊まったと伝える。もうひとつは牛潟で、将門を乗せた牛車が何かに驚いて潟へ転げ落ち、牛が命を落とした場所だという。寛政八年(一七九六)六月にこの土地を歩いた菅江真澄が、紀行『外浜奇勝』に二つの言い伝えを書き留めた。著者は、もとは信田小太郎にまつわる話だったものが、のちに将門その人の事跡へ混ざり込んだのではないかと見ている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
将門伝説——民衆の心に生きる英雄(梶原正昭・矢代和夫・1966年(昭和41年))
『将門伝説——民衆の心に生きる英雄』は、梶原正昭と矢代和夫が一九六六年に著した平将門の伝説の研究書である。茨城県岩井町をはじめ各地の伝説地の踏査と、縁起・古記録・地誌をもとに、将門の怨霊と調伏、七人の影武者、子の良門や娘の如蔵尼、寵妃桔梗ら落人の行方、後裔を名告る家々、伝説の伝播と文芸化をたどる。序章と三篇からなり、巻末に青森県から鳥取県までの伝説分布と、寺社縁起など関係文献の抄録を附録として付す。