「目一つ」の妖怪
どんな伝承か
阿部正路が一つ目の妖怪を論じる。田地を守り抜いた北国の翁が、死後、酒におぼれた子に田を売られ、夜な夜な目一つの黒いものとなって「田かへせ」とののしる「泥田坊」の話を挙げ、目が一つに集まった妖怪こそ真に恐ろしいと説く。その実例として『耳袋』の「奇体の事」を引く。文化九年、相州津久井の名倉村名主・源内所持の字谷向という芝地から、左眼を見開いた高さ一尺八寸ほどの奇体が掘り起こされたという。
原典より
子孫のためにいさ、かの田地をかひ置きて寒暑風雨をさけず時々の耕作おこたらざりしに、この翁死してよりその子酒にふけりて農業を事とせず。—— にっぽん妖怪の謎(阿部正路・阿部正路・妖怪学・1992年(平成4年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
にっぽん妖怪の謎(阿部正路・阿部正路・妖怪学・1992年(平成4年))
『にっぽん妖怪の謎』は、阿部正路が平成四年に著した日本の妖怪論である。神の零落した姿としての妖怪という見方から、記紀や『今昔物語集』『太平記』、西鶴や『耳袋』、鳥山石燕の画図、近代文学や漫画までを引き、鬼・天狗・河童・狐・蛇・鵼などの出現と変遷を論じる。五章に分け、魔女・妖精・吸血鬼など外国の妖怪を扱う十篇のコラムを挟み、あとがきでは秋田の将軍野に生まれ柳田国男・折口信夫の門流につながる著者の来歴を語る。