入墨を教えて去った小人
どんな伝承か
アイヌが住みつく以前の昔、宗谷の沿岸にはコロポックルという小人が、穴を掘りあるいは草むろを造って住み、川や海の魚を獲って暮らしていたという。その漁の腕はアイヌの及ぶところではなかった。小人は決して姿を見せず、深夜そっとアイヌの家の窓下や入口に魚を置いていった。ところが好奇心にかられた若者が連夜待ち伏せ、ついに一人を捕えてしまう。背丈は一メートルほど、顔にいれずみをし、半裸の腕はたくましかった。以来、魚は届かなくなり、小人たちは持物を泊内のチルラトイに埋めていずこへか去った。アイヌがいれずみをするのは、この小人から教わったものだと伝わる。
原典より
コロポックルなる小人が、アイヌが来住する以前の昔、宗谷の沿岸地帯に穴を掘り、あるいは草むろを造って住み、川や海の魚を漁り住んでいたという。—— 日本伝説大系 第1巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第1巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第1巻』は、叢書『日本伝説大系』のうち北海道と青森県の伝説を収めた巻である。人間の始めやコロポックル、アイヌの神謡、岩木山一代記、おしら祭文、義経や弘法大師の事跡、狐や大蛇の話、地名や神社の由来などを、口承の資料を中心に採る。伝承地を記した例話を冒頭に置き、〔類話〕〔文献〕〔参考〕の欄で各地の類話の梗概と近世以後の文献の原文を添える編み方をとる。