供え物を求めた死者の国の父母
どんな伝承か
熊狩りに出た夫が青ざめて戻り、体を祓ってほしいと言った。ヨモギで祓ってから話を聞くと、山で見慣れぬ穴を見つけて入り込み、進むうちに前方が明るくなって別の世界へ出たという。大きなエゾ松に死人の杖が何本も立てかけられ、海辺では船荷を上げる者たちがいたが、いずれも死んだ人ばかりで、ぶつかりそうになっても気づかない。近くの家に入ると死んだ父母がおり、供え物を送らないので宴に招かれることもなく悲しく暮らしていると叱られ、これからは誰が死んでも物を供えよと言い含められた。死者の国を見た者は長くないと語り、夫はまもなく死んだと伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第1巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第1巻』は、叢書『日本伝説大系』のうち北海道と青森県の伝説を収めた巻である。人間の始めやコロポックル、アイヌの神謡、岩木山一代記、おしら祭文、義経や弘法大師の事跡、狐や大蛇の話、地名や神社の由来などを、口承の資料を中心に採る。伝承地を記した例話を冒頭に置き、〔類話〕〔文献〕〔参考〕の欄で各地の類話の梗概と近世以後の文献の原文を添える編み方をとる。