海神に身を投げた下国の姫
どんな伝承か
茂辺地川は鮭がよく獲れ、アイヌはこれを捕って暮らしを立て、下国氏がこの地を領してからも領民は川の鮭に頼っていた。ところがある年から鮭がまったく川へ入らず、それが数年続いて人々は困り果てた。折しも領主の夢枕に、愛姫を海神に捧げれば漁は前年の倍になるとの告げがあり、領主はふさぎ込む。年十八の姫は父の様子を案じて理由を問いただし、ついに打ち明けられると、領民のために犠牲になりますと言い残し、止める父の手を振り切って外へ出た。断崖から海に向かって祈ること数時、姫は数十丈の崖から身を躍らせた。以後、茂辺地の鮭は昔にまさって獲れるようになったという。
原典より
茂辺地川には鮭を産すること多く、アイヌは之を捕へて生計を立てて居た。—— 日本伝説大系 第1巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第1巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第1巻』は、叢書『日本伝説大系』のうち北海道と青森県の伝説を収めた巻である。人間の始めやコロポックル、アイヌの神謡、岩木山一代記、おしら祭文、義経や弘法大師の事跡、狐や大蛇の話、地名や神社の由来などを、口承の資料を中心に採る。伝承地を記した例話を冒頭に置き、〔類話〕〔文献〕〔参考〕の欄で各地の類話の梗概と近世以後の文献の原文を添える編み方をとる。