和琴半島に刻まれた義経の姿
どんな伝承か
釧路川をさかのぼって屈斜路湖に着いたサマイクル、すなわち義経は、その景色を気に入ってしばらく留まったという。穴居して狩も漁も知らずにいた土地の人々に、ブシ矢の作り方、釣針で魚を捕る法、アッシを織って着物にすることを教えた。やがて北見へ移ると告げ、困ったときは自分の名を呼べと言い残し、和琴半島の突端の岩へ武者姿を刻んで去った。湖の西岸には桟橋を意味するサマイクルプエ、倉庫を指すサマイクルプーの名が残る。和琴岬の岩人形は鎧冑姿で沖へ腕を組んで立ち、猟や大漁のたびにイナウを供えられたが、酔った和人の人夫が小便をかけた数日後、吹雪の晩に忽然と消えた。カムイは神の国モシリパへ帰ったのだと伝えられる。
原典より
こうして釧路川をさかのぼって、屈斜路湖に達した、サマイクルなる義経は、その雄大な景色を大層気に入ったので、しばらく滞在することになった。—— 日本伝説大系 第1巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第1巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第1巻』は、叢書『日本伝説大系』のうち北海道と青森県の伝説を収めた巻である。人間の始めやコロポックル、アイヌの神謡、岩木山一代記、おしら祭文、義経や弘法大師の事跡、狐や大蛇の話、地名や神社の由来などを、口承の資料を中心に採る。伝承地を記した例話を冒頭に置き、〔類話〕〔文献〕〔参考〕の欄で各地の類話の梗概と近世以後の文献の原文を添える編み方をとる。