摩周湖の大魚と黒塗りの丸木舟
どんな伝承か
大昔、カムイトすなわち摩周湖には、熊でも鹿でも落ちれば一口に呑むという恐ろしい大魚の主が棲み、丸木舟で漁に出て呑まれた者が幾人もいた。釧路の酋長カンナカムイエカシは勇士を選んでこれを討とうとしたが、二度とも大魚の起こす大波に舟や筏をくつがえされて退いた。そこで祈り手の老人の発案により、白木の舟と黒塗りの舟を一艘ずつ湖に浮かべてみると、大魚は白木の舟にばかり飛びかかり、黒塗りの舟には見向きもしなかった。酋長は退治をやめて引き揚げ、以後みな黒塗りの舟で漁をしたところ、二度と襲われなくなったという。大魚はチライ、すなわちイトウだと伝える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第1巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第1巻』は、叢書『日本伝説大系』のうち北海道と青森県の伝説を収めた巻である。人間の始めやコロポックル、アイヌの神謡、岩木山一代記、おしら祭文、義経や弘法大師の事跡、狐や大蛇の話、地名や神社の由来などを、口承の資料を中心に採る。伝承地を記した例話を冒頭に置き、〔類話〕〔文献〕〔参考〕の欄で各地の類話の梗概と近世以後の文献の原文を添える編み方をとる。