乳の神となった玉の江の姥杉
どんな伝承か
知内の大野家の祖、了徳院紀重一の妻である玉の江は、夫に遅れて幾年も経たぬうちに世を去った。夫が雨石神社に祀られて霊験を称えられるのを見て、自分の遺骨も眺めのよい場所に埋めよ、乳の神となって乳のない人を救おうと遺言したという。遺族は風色のすぐれた荒神山の麓に葬り、墓標として杉を一本植えた。乳の足りない女がこの杉に額ずいて祈ると幾日もせず乳が張るというので、姥杉と呼ばれて信仰を集め、城下や箱館、江差からも人が訪れた。杉は漁船の目標ともなり、地上三尺ほどに乳房に似た瘤があって、年中乳汁のような脂が流れると伝わる。
原典より
上磯郡知内村(現在、知内町)大野家の祖、同姓了徳院紀重一の室、玉の江は、了徳院歿後、幾年もたたぬに世を去った。—— 日本伝説大系 第1巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第1巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第1巻』は、叢書『日本伝説大系』のうち北海道と青森県の伝説を収めた巻である。人間の始めやコロポックル、アイヌの神謡、岩木山一代記、おしら祭文、義経や弘法大師の事跡、狐や大蛇の話、地名や神社の由来などを、口承の資料を中心に採る。伝承地を記した例話を冒頭に置き、〔類話〕〔文献〕〔参考〕の欄で各地の類話の梗概と近世以後の文献の原文を添える編み方をとる。