蜻蛉が教えた田山の酒の泉
どんな伝承か
昔、田山に大金持ちがあり、だんぶり長者と呼ばれた。長者は若いころ大変正直な百姓で、よく働いた。あるとき夫婦で山の畑へ稼ぎに行き、昼寝をしていると、眠っている夫の顔の上を、だんぶりが口や鼻のあたりを飛び回っていた。目を覚ました夫が、畑の向こうの山陰にとてもよい酒があって、いまそれを飲んだ夢を見たと言う。妻が不思議に思って二人で山陰へ行くと、よい香りのする水が流れていて、飲んでみると酒であった。夫婦はこれを汲んでは売り、汲んでは売りして金持ちになり、そのうえ黄金も出て、多くの人を使って掘らせ、ついに長者になった。だんぶりに教えられたので、だんぶり長者というと伝える。
原典より
<柳田——「蜻蛉長者」>昔な、田山に大金持ちぁあったど。—— 日本伝説大系 第2巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第2巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第2巻』は、岩手・宮城・秋田の三県に伝わる伝説を話の型ごとに集めた伝説資料集である。山の争いや沼の主の手紙、巨人の足跡、八郎太郎、ザシキワラシ、河童、掃部長者などの伝説を、口承の聞き書きと近世以降の地誌・縁起から採る。凡例のとおり各項は伝承地を示した例話を冒頭に据え、〔類話〕〔文献〕〔参考〕を続け、柳田・高木による話型名を添えた項もある。