足半を返せと迫る大きな手
どんな伝承か
新庄市真柄の権兵衛山は、いまは一帯が杉林となっているが、かつては蔵岡山まで続く大森林で、ひどく寂しい場所だったという。数代前の主人に宗兵衛という力の強い剛胆な男がいた。あるとき山深くへ入ると、人間のものとは思えない大きな足半が片方だけ落ちている。山姥のものだろうと拾って帰り、その夜は何事もなかったが、翌朝、外から「宗兵衛、昨日わたしの足半を拾ってきたろう、あるなら返せ」と呼ぶ声がした。高桟間を開けてその上に置くと、手が伸びてきて取り、「これからは落ちていても持ってくるな。わたしの後ろを見るなよ」と恐ろしい声で怒鳴られた。外から高桟間までは八尺はあり、そこへ手が届くならよほど大きな山姥だろうと噂したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第3巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第3巻』は、山形・福島・新潟の三県に伝わる伝説を集めた叢書『日本伝説大系』の一巻である。湖水の干拓、鮭の大助、八百比丘尼、弥三郎婆、安達ヶ原の鬼婆、産女、雪女房、河童などの話のほか、松・杉・石・池・清水・温泉・長者にまつわる伝説を、口承資料を主に採っている。全体は「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」に分かれ、各項目は例話と伝承地を掲げ、〔類話〕〔文献〕〔参考〕で近世以後の史料や県外の類例を補う。