泉田川の水を涸らした乞食坊主
どんな伝承か
むかし泉田川には鮭がたくさん遡った。村人が網に余るほど鮭を獲っていると、汚れた衣に切れた草鞋の乞食のような坊主が来た。村人は面白がって、いらないという坊主の背に、葦で包み葛の蔓でくくった鮭を無理に背負わせた。坊主は「そんなに惜しまぬなら、この川には水も鮭も来ないようにする。葦も葛の蔓もみな無くす」と言い捨てて去り、翌年から泉田川の水は止まり、葦も葛も生えなくなった。同じ坊主が百姓家で水を乞うと、井戸のない老婆が詫びた。坊主が「流し尻を掘れ」と教えると、日照りでも涸れない水が湧いた。機を織る老婆が織りつけを切って与えると、何年使っても尽きない万年機になったという。村人はあの坊主こそ弘法様だったと語り伝えた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第3巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第3巻』は、山形・福島・新潟の三県に伝わる伝説を集めた叢書『日本伝説大系』の一巻である。湖水の干拓、鮭の大助、八百比丘尼、弥三郎婆、安達ヶ原の鬼婆、産女、雪女房、河童などの話のほか、松・杉・石・池・清水・温泉・長者にまつわる伝説を、口承資料を主に採っている。全体は「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」に分かれ、各項目は例話と伝承地を掲げ、〔類話〕〔文献〕〔参考〕で近世以後の史料や県外の類例を補う。