弥吉坑で死んだ弥三郎と鬼になった母
どんな伝承か
昔、越後の弥彦村に弥三郎という百姓がいた。悪事をはたらいて佐渡へ流され、東五十里村(今の東野)の弥吉坑で働く。坑内の労働は過酷で餓鬼病にかかり、下水を飲んで死んだ。数年後、訪ねて来た母が息子の骨を抱いて泣くのを名主のバンゾウが憐れみ、家に置いて子守をさせる。婆は子の鼻水や腫物の膿を吸ううち、やがて血を吸い子を食うようになった。縛られて代官所へ突き出されると口が裂けて角が生え、代官に片腕を斬られて黒雲に乗り消えた。その日が九月十三日で東野の小平神社の祭日となり、以来この日は南から黒雲が出て荒れるという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第3巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第3巻』は、山形・福島・新潟の三県に伝わる伝説を集めた叢書『日本伝説大系』の一巻である。湖水の干拓、鮭の大助、八百比丘尼、弥三郎婆、安達ヶ原の鬼婆、産女、雪女房、河童などの話のほか、松・杉・石・池・清水・温泉・長者にまつわる伝説を、口承資料を主に採っている。全体は「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」に分かれ、各項目は例話と伝承地を掲げ、〔類話〕〔文献〕〔参考〕で近世以後の史料や県外の類例を補う。