ささやいて曳いた杉で架けた私語橋
どんな伝承か
近衛の帝の御代、内裏に妖しいことが続いた。陰陽師に占わせると陸奥国小室郷の杉の精のしわざと出たので、安井源太重宗が勅を奉じて下向した。行ってみると数郡を蔽うほどの巨杉があり、終日斧を入れても夜のうちに元通りになる。人夫を尽くして切り倒したが、今度は木が重くて動かない。再び占うと樹霊と婦人が別れを惜しむためという。郷を尋ねると、夜ごと通う夫があって二児をもうけたが近ごろ来ないと嘆く寡婦がいた。事情を告げて頼むと、女が木にささやきかけ、巨木は軽々と動いたという。この木で架けたのが私語橋で、橋は人のささやくような声を立て、近づくと止んだと伝えられる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第3巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第3巻』は、山形・福島・新潟の三県に伝わる伝説を集めた叢書『日本伝説大系』の一巻である。湖水の干拓、鮭の大助、八百比丘尼、弥三郎婆、安達ヶ原の鬼婆、産女、雪女房、河童などの話のほか、松・杉・石・池・清水・温泉・長者にまつわる伝説を、口承資料を主に採っている。全体は「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」に分かれ、各項目は例話と伝承地を掲げ、〔類話〕〔文献〕〔参考〕で近世以後の史料や県外の類例を補う。