奥の院で嘘をついた父と石童丸
どんな伝承か
伊都郡高野町高野山の話。石童丸の父の名は加藤左衛門繁氏、母の名は千里姫という。今から約八百年前、父は出家して高野山に入り、その頃、播州の大山寺で石童丸が生まれ母の手で育てられた。十四歳になった石童丸は母と二人で高野山へ向かい、麓の学文路の玉屋に泊まったが、女は登れないと知って一人で登る。何日も父を探し、奥の院の無名の橋で花桶を持つ僧に父のことを尋ねると、僧の顔色は変わり目に涙が浮かんだ。それが父であったが、仏に仕える身ゆえ、父は病で亡くなり今日が四十九日だと偽り、近くの新しい墓を教えた。麓へ戻ると母は死んでおり、石童丸は再び山へ登って苅萱堂で父とも知らず弟子になり、一生を僧で終えたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。