静が井戸の火の玉と西生寺の名
どんな伝承か
義経が吉野山で静御前と別れ、奥羽へ落ちのびたのち、静は「今はもう頼むところもない」といって身を井戸に投げた。これが中荘村、今の吉野町の西生寺境内にある「静が井戸」である。その後、静の亡霊が火の玉となって井戸から現れるので、村人は蓮如上人に頼んで済度してもらうことにした。上人は大谷氏の家に残っていた静の振袖に「静にはその形なく白骨のにくをはなれてなむあみだぶつ」と書きつけ、七日間の法会を行なった。満願の夜の夢に静が現れ、「長らくの迷いの門出ができました」と語ったという。寺はもと西光寺といったが、この時から西生寺と改めたと伝える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。