金峯山蔵王堂の蛙飛と託宣
どんな伝承か
吉野の金峯山蔵王堂では七月七日に蛙飛神事が今も行われているが、すっかり見世物になってしまい、『大和の年中行事』などが記す由来も昔とは違ったものになっている。しかし『大和高取藩風俗問状答』や『西国三十三所名勝図絵』によれば、これももとは託宣を聴くための手段だった。僧たちの読経にかき乱された蛙の姿の僧が一人、戒壇の上を跳ね回って託宣を下し、そのまま気を失う。それを僧たちがもう一度経を読んで息を吹き返させたのだという。
原典より
吉野金峯山の蔵王堂で七月七日おこなわれる蛙飛神事は今も続いているが、そのかわり、全くの見世物に堕し、…—— 日本の憑きもの――俗信は今も生きている(石塚尊俊・1959年(昭和34年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の憑きもの――俗信は今も生きている(石塚尊俊・1959年(昭和34年))
『日本の憑きもの――俗信は今も生きている』は、石塚尊俊が昭和三十四年に著した研究書である。狐・犬神・蛇などの動物霊が人に憑くという俗信と、それを操るとされる家筋について、全国の伝承と近世以来の文書を集めて論じる。出雲・隠岐・豊後・土佐では筋の家の割合や縁組の偏りを調べ、憑きもの落としの行法や家の神とのつながりまでを七章で追っている。