濁り水をもてなした若樫の庄屋の井戸
どんな伝承か
昔、若樫の庄屋の門を叩いた旅僧があった。僧が庄屋の主婦に水を一杯所望すると、差し出された水は飲料に適さないほど濁っていたが、僧はおいしそうに飲んだ。さらに一夜の宿を乞うと、庄屋夫婦は僧の汚なさをいとわず屋敷の中へ招じ入れてもてなした。庄屋が村に良水の湧く井戸がないことを語ると、翌朝早く起き出た旅僧は、若樫の杖で庭に井戸を掘り、井戸のほとりにその杖を突き立てて立ち去った。旅僧は弘法大師だったと言い伝えており、若樫という地名の起源伝説でもある。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。