尽きぬ五十文を授けた乞食坊主
どんな伝承か
矢田村のはずれ、高岸という所で、弥二郎という農夫の妻が機を織っていた。そこへ乞食坊主が来て、織っている木綿の端を一尺切り、その次を二尺くれと言う。妻は驚き恐れながらも惜しむことなく、望みどおりに与えた。僧は銭五十文を差し出し、少しずつ使えば用は足りる、けっして使い切ってはならぬと懇ろに教えて山へ入っていった。言われたとおりにすると、夜になれば銭はまた五十文に満ち、木綿ももとの長さに戻ったという。この乞食は弘法大師であったと里人は語り伝えている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第10巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第10巻』は、全国の伝説を型ごとに分けて集めた叢書の一巻である。岡山・広島・山口の三県を伝承地とし、蘇民将来、吉備津彦と温羅、厚狭の寝太郎、化け猫、河童駒引き、夜泣き石、姥棄て山などの伝説を、聞き書きや市町村誌、民話集から採って収める。「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」の部に分けて番号順に並べ、各話には伝承地と本文のあとに〔類話〕と近世の地誌などを引く〔文献〕を添える。