袖に入った小石が育った産神の由来
どんな伝承か
慶長のころ、下山守村の太郎左衛門という者が、毎年芸州の厳島へ参っていた。年老いて社前にぬかずき、これが最後の拝謁かと涙を流して帰る船の中で、思いがけず袖に小石が入っていた。同船の若者の戯れかと海へ投げ入れて眠ると、また袖に同じ石がある。神の業かと思って伏したその夢に、明神が麗しい姿で枕元に立った。夜明けに石を押し戴いて持ち帰り、人々に語ると村中が伝え聞き、小祠を建てて石を神璽に納め、厳島大明神として産神に祀った。石は袖から出したのち次第に太り、いまは高さ一尺七、八寸、まわり二尺二、三寸になったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第10巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)・現代(編纂)/伝承(口承))
『日本伝説大系 第10巻』所収の「文化叙事伝説」および「自然説明伝説」全85話(岡山・広島・山口=中国地方)を、各話の伝承地(市町村〜字レベル)とともに収める。