薬罐の蓋を落とした猫又の婆
どんな伝承か
松江家中に小池という家があった。その下男が広瀬へ使いに行き、遅くなって近道をしたところ、桧山の峠近くで藪陰に光るものを見た。狼の眼である。下男が脇差を構えると眼は消えたが、狼はまもなく仲間を大勢呼んできた。下男はそばの大木に登り、狼が順々に肩車で伸びてくるのを見たが、数尺のところで足りない。一番上が小池の婆さんを呼んでこいと怒鳴り、組み直された一番上の見知らぬ手を斬りつけると、からんからんと音がして狼は逃げた。落ちていたのは薬罐の蓋で、家では婆が便所で転んだと騒ぎ、納戸には大猫又がいた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第11巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第11巻』は、山陰の鳥取・島根両県の伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。矮姫による穀物の伝来、大山の山くらべ、伯耆の白兎、雲州皿屋敷、七尋女房、牛鬼、隠岐の後鳥羽上皇などを、伝承地を明記した口承の例話で示し、類話と近世以降の文献を添える。「文化叙事伝説」「自然説明伝説」の部に分けて話ごとに番号を付し、凡例のとおり例話・類話・文献・参考の順に並べ、多くの話に高木・柳田による伝説名を添える。