大入道に動じぬ男が授かった蝮の毒消し
どんな伝承か
上野原の新町に里吉銀右衛門という百姓がいた。気性のしっかりした働き者で、夏には毎朝まだ暗いうちに家を出て、後山の稲田の水を見に行った。ある朝、薄暗い谷間の道で、背丈三メートルもあろうかという大入道が目の前に立ちふさがった。銀右衛門はひるまずにらみ据え、悠々と見回りを済ませて帰った。幾度か同じことがあった後、今度は白髪白髯の老人が現れ、こわいものはないのかと問う。道でマムシに咬まれるのだけがこわいと答えると、老人は笑って、マムシの毒を消す法をねんごろに授けた。試すと著しい効き目があり、遠方からも人が治療に訪れたという。秘法は今も同家に伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。