猿島へ渡る船を救ったアワビ
どんな伝承か
日蓮上人が上総から猿島へ船で渡ったときのことである。しだいに風波が強まり、古い船はとうとう船底に穴があいた。海水が入り込み、もはやこれまでと思われたとき、上人が一心に題目を唱えはじめると、浸水は急に止まり、波も静まった。驚いた船頭が船底をのぞくと、大きなアワビが穴にぴたりと吸いつき、水をふさいでいたという。上陸ののち米が浜へ向かった際には、船頭がサザエの角で足を傷つけたので、上人は経を唱えて血を止め、この近海のサザエから角をなくしてしまったと伝える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。