半原の青馬と磨墨沢の蹄の跡
どんな伝承か
岡崎四郎義実は、居城の岡崎城を出て領地の愛甲郡を半原まで見回り、原野を駆ける若駒のいななきを聞くのを楽しみにしていた。ある夜、伊保に住む小島時次郎自慢の青馬が三度いなないた。その声は鎌倉まで届き、名馬を求めていた頼朝の耳に入る。使者として遣わされた畠山重忠は義実とともに時次郎を訪ね、青馬の献上を承知させた。恩賞を望まなかった時次郎には、正宗の刀一振と鈴石一つが贈られたという。この馬がのちの磨墨であり、伊保のあたりには馬が駆けた原や沢があって、岩に蹄の跡を残す沢を磨墨沢と呼ぶ。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。