日を止めて死んだ早乙女の塚
どんな伝承か
五月の田植えのさなかのことである。ある早乙女が、八升まきの田を自分ひとりで植えきろうと決めて働きはじめた。女の腕ではとても手に余る広さで、日暮れが迫ってくる。早乙女は、植え終えるまで沈まないでほしい、それがかなうなら命を差し上げると太陽に願をかけた。顔を上げると日は山の上あたりでぴたりと止まっており、女は夢中で植え通した。植え終えると同時に日は山陰へ落ちた。畔へ上がった女は、お天日さまと一緒に終われたと言って腰を伸ばした途端、そのまま息絶えたという。その田を早乙女田、傍らの塚を早乙女塚と呼び、いまも発電所のあたりにあると伝える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。