日蓮が吹き上げた小室山の大石
どんな伝承か
文永のころ、肥前阿闍梨恵朝という真言修験者が東三十三ヶ国の頭領として小室山に勢力を張っていた。文永十一年、五十三歳の日蓮が身延山へ向かう途中この地を通り、小室山の登り口の土録にある大石の上に座した。折しも五月の田植えの最中で、早乙女が手足に食い込む虫を殺すのを見た日蓮は、一匹でも殺せば罪になると説き、祈って虫が人の血を吸わぬようにしたという。これを聞いた恵朝が怒って法論を挑んだが、日蓮は座した大石を息で宙へ吹き上げ、数珠を直立させて人々を驚かせた。恵朝は屈して弟子となり日伝と改め、小室山は日蓮宗の徳栄山妙法寺となった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。