美人に心を迷わせた大乗明恵
どんな伝承か
昔は法華経の経典を一万部読まなければ一人前の僧になれないとされていた。あるとき大乗明恵という若い僧が九千部山に登り、一万部をめざして経を読んでいた。九千部まで読み上げたところで絶世の美人が現れ、それまで一心不乱だった明恵は心を迷わせて読経をやめてしまい、一万部経の願は成就しなかった。それがこの山の名の由来だという。僧が九千部を読んで白骨となって死んでいたからだという話もある。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第13巻(山中耕作・宮地武彦(執筆・整理)/荒木博之(解説)・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第13巻――北九州(福岡・大分・佐賀・長崎)』は、福岡・大分を山中耕作、佐賀・長崎を宮地武彦が執筆・整理し、荒木博之が解説を担った伝説資料集の一巻である。姫島、うつぼ舟、百合若大臣、黒髪山の大蛇退治、平家谷、炭焼小五郎、河童、白米城など、北九州四県に伝わる伝説を題目ごとに収める。各題目は口承を重んじて選んだ例話を冒頭に据え、県別の類話を梗概にして伝承地と出典名を添え、近世以後の史料を文献として抜き出す編み方をとる。