洞に隠れた家康と粟たきの清水
どんな伝承か
徳川家康が戦に敗れ、知多郡鬼崎村(常滑市)の八幡社に逃れてきたことがあった。追手が迫るので境内の大木の洞に身を隠したが、追手の一人に見つかってしまう。その者はかねて家康の徳を慕っており、天下を取ったら高禄で召し抱えるという約束で見逃すことにし、刀に蜘蛛の巣を巻いて洞を出て、仲間には中は蜘蛛の巣だらけだったと偽った。難を逃れた家康は近くの民家で食事を頼み、その家は三楷山の麓に湧く清水で粟飯を炊いて出した。以来この水を粟たきの清水と呼ぶ。家康はのちに八幡社へ田畑を寄進したが、三代家光の時に調査に来た幕府の役人を神主が偽者と思い込んで会わなかったため、その寺領は取り上げられたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
愛知県伝説集(福田祥男・1961年(昭和36年))
『愛知県伝説集』は、福田祥男が昭和三十六年に著した愛知県の伝説集である。尾張・三河の山や海、淵や池、地蔵と観音、石や塚、城跡、地名、動物と変化、植物、祟りと怨霊などにまつわる言い伝えを、原型に忠実に再現することをめざして平易な文で語り直し、話の末に郡市名を添える。山の伝説から其の他の伝説まで十五の部に分け、あとがきでは前年に出した『愛知県伝説集・虹と黒潮』を全面的に改稿し増補したと記す。