子供に引きずり回される御殿の観音
どんな伝承か
東栄町の旧御殿村引田にある阿弥陀堂の観音様は、たいそう子供好きだという。昔、子供たちがこの観音を持ち出し、堂の前の田で襷で縛って引きずり回しているのを村人がひどく叱ると、その人は急に病気になった。これからは子供の好きにさせますと観音に詫びを入れると、すぐに治ったそうである。また数十年前の大風で堂が倒れ、建て替えの工事の間、邪魔になるからと子供が堂の近くへ来るのを禁じたところ、大風が吹いたり怪我人が出たりして一向にはかどらなかった。これも観音の心だろうと子供の立ち入りを許した。そんな観音なので鼻が欠け手足がちぎれ、いつも泥まみれだが、誰も怪しむ者はいない。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
愛知県伝説集(福田祥男・1961年(昭和36年))
『愛知県伝説集』は、福田祥男が昭和三十六年に著した愛知県の伝説集である。尾張・三河の山や海、淵や池、地蔵と観音、石や塚、城跡、地名、動物と変化、植物、祟りと怨霊などにまつわる言い伝えを、原型に忠実に再現することをめざして平易な文で語り直し、話の末に郡市名を添える。山の伝説から其の他の伝説まで十五の部に分け、あとがきでは前年に出した『愛知県伝説集・虹と黒潮』を全面的に改稿し増補したと記す。