藪撃ちの弾
どんな伝承か
上津具(北設楽郡津具村)の新左は嘘こきの名人だった。とっぴょうしもない大嘘つきだが、その嘘は馬鹿馬鹿しくて罪がなく、いっそ世の中が楽しくなるような嘘だったという。話のはじめには必ず、おれも本当のことは知らぬが、と真顔で断り、途中で聞き手が笑うと話をやめてしまうくせに、一話終わると自分からゲラゲラ笑った。得意は鉄砲の自慢話だが、新左自身の鉄砲の腕はまるで下手だった。その一つ。藪の中へ鉄砲を撃ち込んだところ、弾があちこちに跳ね返って、ひんがらひがら(一日中)パチパチパチパチと鳴っていたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
愛知県伝説集(福田祥男・1961年(昭和36年))
『愛知県伝説集』は、福田祥男が昭和三十六年に著した愛知県の伝説集である。尾張・三河の山や海、淵や池、地蔵と観音、石や塚、城跡、地名、動物と変化、植物、祟りと怨霊などにまつわる言い伝えを、原型に忠実に再現することをめざして平易な文で語り直し、話の末に郡市名を添える。山の伝説から其の他の伝説まで十五の部に分け、あとがきでは前年に出した『愛知県伝説集・虹と黒潮』を全面的に改稿し増補したと記す。