鹿追いと雑魚
どんな伝承か
上津具(北設楽郡津具村)の新左は嘘こきの名人で、得意は鉄砲の自慢話だった。その一つ。鹿を追い出したところ、鹿は川へ飛び込み、自分も飛び込んだ。鹿が向こうの岡へ駆け上がろうとするのに追いつき、尻尾に取りついた。鹿は死に物狂いであがき、とうとう川岸に植えてあった山芋を足で掘り出してしまった。ようやく鹿をねじ伏せて気がつくと、履いていたたつけがやけに重い。脱いでみると、たつけの中に雑魚がいっぱい入っていた、と新左は語って笑ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
愛知県伝説集(福田祥男・1961年(昭和36年))
『愛知県伝説集』は、福田祥男が昭和三十六年に著した愛知県の伝説集である。尾張・三河の山や海、淵や池、地蔵と観音、石や塚、城跡、地名、動物と変化、植物、祟りと怨霊などにまつわる言い伝えを、原型に忠実に再現することをめざして平易な文で語り直し、話の末に郡市名を添える。山の伝説から其の他の伝説まで十五の部に分け、あとがきでは前年に出した『愛知県伝説集・虹と黒潮』を全面的に改稿し増補したと記す。