八人峠の山賊を改心させた僧と菊水寺
どんな伝承か
秩父札所三十三番の延命山菊水寺は吉田町桜井にあるが、昔は小坂下にあったという。この辺りでは、峠に巣くった八人の山賊が一人の僧の感化で生まれ変わった話が伝わる。旅人の金品ばかりか着物まで剥ぐ悪事が重なり、峠は八人峠と呼ばれて誰も通らなくなった。ある日、杖をついて峠を登ってきた年配の僧を賊が刀で脅したが、僧は動じずに九字の印を切り、賊は金縛りになった。僧は再び印を切って地獄の苦しみを味わわせ、罪の報いを説いた。改心して弟子入りを願う賊に、僧は麓の菊水という泉で身を清めるよう教え、霊木から観音像を三体刻んで授けた。八人は寺を建てて仏に仕え、皆長生きしたといい、これが菊水寺の起こりとされる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
秩父の伝説と方言
『秩父の伝説と方言』は、秩父市教育長鶴沢福松の序を付し、編集委員が執筆整理にあたって編んだ秩父地方の伝説と方言の集成である。秩父市と秩父郡に伝わる伝説を集め、武甲山麓のジジイ・ババア石、橋立鍾乳洞の悪龍、畠山重忠や坂上田村麻呂にまつわる話、伐ると祟る天狗松などを語り口調で記す。伝説は石・水・塚・屋敷跡・山と人物・地名・社寺および城跡・木に関する八つの部に分け、話によっては他地方の類話を注記する。