石を投げた狐に道を失わされた男
どんな伝承か
十徳の西方、熊野神社の森を囲んで鬱蒼とした林が続き、狐や狸が棲んでいた。入生田の庄右工門が一日野良で働き、薄暗くなって帰る途中、円福寺の裏の福沢堀に架かる一本橋を渡ると、傍らに小犬ほどの狐が寝ていた。面白半分に石を投げつけると、狐は驚いて飛び上がり、そばの林へ入っていった。さて帰ろうとすると急に真っ暗になり、一寸先も歩けない。狐の仕返しだろうと手にした鎌を振り回しても手応えがない。近くに家があるのに行けず、萱野に入ったり右往左往して幾時間も費やした。小山に腰かけて煙草をふかしていると人が通りかかり、声を掛けられてようやく靄が晴れ、道もわかった。その時、草叢から狐が飛び出して走り去ったという。
原典より
十徳の西方熊野神社の森林を囲んで、あたりは鬱蒼とした林が続いていて、狐や狸が棲んでいるのでした。—— 高畠町伝説集(山形県立高畠高等学校文芸班(編)・1957年(昭和32年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
高畠町伝説集(山形県立高畠高等学校文芸班(編)・1957年(昭和32年))
『高畠町伝説集』は、山形県立高畠高等学校文芸班が熊木成夫教諭の指導で編み、昭和三十二年に高畠町伝説集刊行会から発行した伝説集である。高畠町とその周辺に伝わる社寺の縁起、人物、怪異、動物、地名の由来などを、古老からの聞き書きと古記録から採り、内容の多くは郷土研究家安部名平次の蒐集による。神仏・人物・怪異・動物・什物・地物・地名・地誌の八篇に分け、町長の序と校長・安部名平次・武田好吉の文、編者の後記を付す。