地節を語って去った赤猫
どんな伝承か
安永の頃、露藤の宝岳寺は古寺場という所にあり、安永二年の火災で焼けて、寛政年間に現在地へ再建された。寺のあたりは平蔵在家と呼ばれて一集落をなし、清水の南隣に長右エ門という家があった。六十ばかりの老婆が、十数年飼う赤毛の猫と二人きりで暮らしていた。ある秋の晩、寺で地節語りがあり部落の人々は連れ立って出かけたが、老婆は炉端で赤に、お前が行って聞いてこいと戯れに言った。猫は一声鳴いて出て行き、翌朝、老婆が昨夜の地節はどうだったと独り言を言うと、聞いてきたぞと答え、地節の筋を細々と語った。驚いた老婆が、化けるようになったお前は置けぬと言うと、猫はそのまま歩き去り、二度と姿を見せなかったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
高畠町伝説集(昭和三十二年(1957)刊/高島高校文芸班編)
山形県東置賜郡高畠町(屋代・亀岡・和田・二井宿・糠野目・高安・露藤ほか各地区。一部は隣接の米沢市・南陽市宮内・長井市)に伝わる伝説を、神仏/人物/怪異/動物/什物/地物/地名/地誌 の八篇に分類して集成する。屋代神社の鬼女縁起、犬の宮・猫の宮、安久津八幡、狐狸むじなの化かし、天狗・怪物・沼の怪、青葉の笛や応挙の幽霊画、伊達・上杉の城館跡や古戦場、地名由来など、高畠の地に根ざした怪異・霊験・由来譚を地区つきで網羅する。