弁財天と五頭龍
どんな伝承か
昔、七里ヶ浜から鵠沼にかけての一帯では、一つの体に五つの頭を持つ悪竜が暴れ、山崩れや洪水、火の雨、疫病を起こしていた。とりわけ子どもを食らうのが恐れられ、津村の長者の十六人の子はすべて餌食になり、腰越の名も子死越から来たという。欽明天皇十三年、海辺が雲霧に包まれて大地が揺れ、童子を従えた天女が紫雲に乗って降りると、海上に島が忽然と現れた。これが江ノ島で、天女は江島神社にまつられる弁財天である。竜は天女に心を奪われて妻にと願ったが、無慈悲な者とは結ばれぬと断られ、二度と悪事をしないと誓って夫婦となった。竜は後に竜口山と化したという。
原典より
五頭の竜がご神体 日本のマイアミビーチ をうたい文句に、数百万人の海水浴客を集める湘南海岸の七里ヶ浜から鶴沼にかけて、その昔、一身五頭の悪竜があばれまわり、里人を泣かせていた。—— 神奈川の伝説(谷川平夫(文)/読売新聞社横浜支局 編・1967年(昭和42年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
神奈川の伝説(谷川平夫(文)/読売新聞社横浜支局 編・1967年(昭和42年))
『神奈川の伝説』は、読売新聞社横浜支局が一九六七年に編んだ神奈川県内の伝説集である。読売新聞神奈川県民版に昭和四十年九月から四十二年八月まで八十回連載された「神奈川の伝説」のうち六十五回分を収め、文は谷川平夫記者が書き、伝説の地を訪ねて住職や古老に聞いた話と現在の様子を添える。樹木・石・塚・水・坂や島・屋敷址・社寺・禁忌・地名の部に話を分け、大藤時彦の序文と巻末の解説・索引を付ける。