浦島寺の狸と夜泣き石
どんな伝承か
浦島太郎ゆかりの観福寿寺、通称浦島寺があった浦島山に、一匹の古狸が住んでいた。海風の吹きつける冬の夜、囲炉裏で温まりたくなった狸は村の隠居に化けて寺を訪ね、話し相手を喜んだ和尚にもてなされ、以後寒い晩ごとに通っては語り明かした。ある朝、板の間に泥だらけの四つ足の跡を見つけた和尚が隠居の家を訪ねると、当人は長く病床にあった。化け物の仕業と悟った和尚は、次の晩、芋に似た石を焼いて土産に持たせた。狸が体の一部を化けさせて広げた風呂敷は焼かれ、狸は気絶して正体を現したが、和尚は殺生をせず諭して放した。焼き石は寒い夜に悲しげに泣くといわれて夜泣き石と呼ばれたが、慶応年間の火事で失われた。
原典より
無量寺の不動明王(横浜市南区蒔田町) 一六九東樹院の文福茶釜(横浜市南区笹下町) 一七三源範頼と大寧寺(横浜市金沢区片吹町) 一七七石老山の源海上人(津久井郡相模湖町) 一八九—— 神奈川の伝説(谷川平夫(文)/読売新聞社横浜支局 編・1967年(昭和42年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
神奈川の伝説(谷川平夫(文)/読売新聞社横浜支局 編・1967年(昭和42年))
『神奈川の伝説』は、読売新聞社横浜支局が一九六七年に編んだ神奈川県内の伝説集である。読売新聞神奈川県民版に昭和四十年九月から四十二年八月まで八十回連載された「神奈川の伝説」のうち六十五回分を収め、文は谷川平夫記者が書き、伝説の地を訪ねて住職や古老に聞いた話と現在の様子を添える。樹木・石・塚・水・坂や島・屋敷址・社寺・禁忌・地名の部に話を分け、大藤時彦の序文と巻末の解説・索引を付ける。