池子の谷戸の大蛇
どんな伝承か
逗子市池子はかつて池や森が多く、蛇がよく出て野良仕事の人を気味悪がらせた土地だという。ある秋の日、老人が池子の谷戸へ薪拾いに出かけ、摺鉢池の水面が木立の奥に光るあたりで倒木に腰かけて一服した。すると腰の下の木がいきなり動き出す。倒木と思ったのは硬い鱗に覆われた大蛇の胴で、十メートルほど先から子犬ほどもある頭が振り返ってにらんでいた。老人は悲鳴をあげて家へ逃げ帰り、雨戸を閉めて寝込んだ。息子に一部始終を話したあと熱にうなされ、そのまま呆けてしまったという。村人は大蛇の祟りを恐れ、摺鉢池のほとりに弁天を祀った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
神奈川の伝説(谷川平夫(文)/読売新聞社横浜支局 編・1967年(昭和42年))
『神奈川の伝説』は、読売新聞社横浜支局が一九六七年に編んだ神奈川県内の伝説集である。読売新聞神奈川県民版に昭和四十年九月から四十二年八月まで八十回連載された「神奈川の伝説」のうち六十五回分を収め、文は谷川平夫記者が書き、伝説の地を訪ねて住職や古老に聞いた話と現在の様子を添える。樹木・石・塚・水・坂や島・屋敷址・社寺・禁忌・地名の部に話を分け、大藤時彦の序文と巻末の解説・索引を付ける。