蹄の井戸と百日咳の霊験
どんな伝承か
横須賀市馬堀の馬頭観音堂のわきの岩には小さなほこらがあり、いつも水をたたえている。上総から海を泳ぎ渡ってきた荒馬の美女鹿毛が、水を求めて倒れたとき観音が現れ、馬が蹄で岩をたたくと清水が湧き出たという場所である。この水は一年中涸れることがなく、土地の人は蹄の井戸と呼び、飲めば百日咳に効くと信じてきた。美女鹿毛はのちに土地の領主三浦義澄の手に渡り、さらに頼朝に献じられて生唼と名付けられ、宇治川の合戦で見事に先陣を果たしたという。馬頭観音の霊験は戦前まで横須賀市中に知られていたが、今では近所の人の信仰にとどまっている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
神奈川の伝説(谷川平夫(文)/読売新聞社横浜支局 編・1967年(昭和42年))
『神奈川の伝説』は、読売新聞社横浜支局が一九六七年に編んだ神奈川県内の伝説集である。読売新聞神奈川県民版に昭和四十年九月から四十二年八月まで八十回連載された「神奈川の伝説」のうち六十五回分を収め、文は谷川平夫記者が書き、伝説の地を訪ねて住職や古老に聞いた話と現在の様子を添える。樹木・石・塚・水・坂や島・屋敷址・社寺・禁忌・地名の部に話を分け、大藤時彦の序文と巻末の解説・索引を付ける。