狼の札と狼憑きを返す三峰参り
どんな伝承か
秩父の三峰山は熊野から来た修験山伏が拠点とし、関東布教の中心地となった。享保三年に日光僧正が作らせた狼の絵姿のお札は火災盗難除けとして人気を呼び、江戸の三峰講信者は安政元年には一万人を超えたという。狼が一度出産するたびに信者が百人増えたとも伝わる。この山の狼は狐と混同され、気が触れるのは山の狼が憑いたためで、山に登りご眷族を返せば治るとされたが、四足憑きでない場合はいくら拝んでも治らなかったという。
原典より
ご眷族をお借りするといってお札を貰ってくると、これが火災盗難除けになるといって、江戸での三峰講の信者はどんどん増えて、安政元(一八五四)年には一万人を越えたそうだ。—— 秩父・奥武蔵伝説たわむれ紀行(神山弘・1984年(昭和59年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
秩父・奥武蔵伝説たわむれ紀行(神山弘・1984年(昭和59年))
『秩父・奥武蔵伝説たわむれ紀行』は、神山弘が一九八四年に著した伝説探訪の紀行である。越辺川の流域や高麗郷、富士山のある村々、竹寺、武甲山と三峰山、宝登山、釜伏峠と粥新田峠など埼玉県西部の山村を歩き、土地の古老からの聞き書きと『新編武蔵風土記稿』などの記録を交えて、竜や大蛇、天狗、幽霊、将門などの伝説を語る。土地ごとの章に小見出しを立てた随筆体で、著者の前著『ものがたり奥武蔵』で扱わなかった土地を主にとりあげる。