どの幕にも顔を出す算所ん熊九郎
どんな伝承か
文化・文政のころ、豊後の国東郡高田郷のあたりは肥前島原藩の領地で、算所村には藩主松平侯お抱えの歌舞伎一座「御前座」の役者たちが集まり住んでいた。一座は毎年正月に島原へ下って藩主の前で初興行を務め、そのあと豊・筑・肥の三国を巡るならわしだった。役者の桐島熊九郎は芸こそ並みだったが、どんな役も嫌がらずにこなすので重宝され、どの幕にも必ず出ていた。ある日たまたま熊九郎の出ない幕があると、桟敷の客が熊九郎を出せと騒ぎ出し、当人が幕の破れ目からぬっと首だけ出して客を大笑いさせた。いまもこの地方では出しゃばりな人を「算所ん熊九郎」にたとえるという。
原典より
すると、幕の破れ目から、当の熊九郎がぬーっと首を出し、見物人たちを大いに笑わせました。—— 大分県の民話 第2集(土屋北彦・大分県の民話) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
大分県の民話 第2集(土屋北彦・大分県の民話)
『大分県の民話 第2集』は、土屋北彦による大分県の民話集である。日田の鬼大夫永季、府内の山弥長者、柞原八幡縁起、小豆研ぎ、百合若物語りなど、県内各地の長者譚・社寺の縁起・人柱・妖怪・英雄の伝説を、古代から江戸時代までの年号や現在の市町村名を添えて語り直す。三十二話を一話ずつ題を立てて並べ、多くは「です・ます」の語りで、方言による短い昔話も交じる。