夜泣きで捨てられ山童になった子
どんな伝承か
昔、日田郡伏木村で、冬の夜に四歳の男の子がひどく夜泣きするので、母親が化け物にやるぞと叱って戸外の木戸のあたりに置いてきた。様子をうかがうと、泣き声は道を越え、田の上の闇を飛ぶように遠ざかって山の向こうへ消えた。村々総出で何日も探したが見つからず、両親はその日を命日とした。二十年ほど後、伏木村の三人が馬を売った帰りに、玖珠郡と速見郡の境の切りふたぎで弁当を食べていると、髪を振り乱し苔の生えた裸の大男が現れて飯をねだった。男は自分も伏木村の者で、幼いころ泣いて捨てられ山の者になった、この恨みを父母に伝えてくれと言い、阿蘇山へ使いに行く途中だと言って姿を消した。天狗に使われる山童であろうという。
原典より
恐らく天狗などに使われているのであろう、これが世に言う山童(やまわらべ)というものであろう。—— 大分県の民話 第3集(土屋北彦・大分県の民話シリーズ) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
大分県の民話 第3集(土屋北彦・大分県の民話シリーズ)
『大分県の民話 第3集』は、土屋北彦が大分県で採集した民話と古記録の奇談を編んだ民話集である。花咲か爺や猿の恩がえし、山うばなどの昔話を方言の語りのまま載せ、狐・河童・大蛇・山童・犬神の話、大友氏泰に殺された吉弘一頓の怨霊、古代の神々が越の国や三韓へ兵を出す話などを収める。あとがきに第三集は本格昔話を中心に古記録の奇談を集めたとあり、末尾に杵築市で記したあとがきを置く。