大蛇を射た弓引道本の入定塚
どんな伝承か
皆野町三沢の峯にある道本塚は、北野という姓の弓の名人道本の塚である。道本は粥煮田峠に近い榛名の池にすむ大蛇を退治して村人を救ったと伝えられる。寛永二十年、死期を悟った道本は身を沈めるほどの穴を掘り、自分の鳴らす鐘の音が聞こえなくなったら土をかぶせて塚にしてほしいと頼んで穴に入った。鐘の音は三日三晩で絶え、人々は言われたとおり塚を築いた。土地では弓引道本と呼ばれ、大蛇を殺したことを悔いて土に入り、七日七晩鉦を叩いて死んだとも語られる。峯の眺めのよい塚の上には道本と妻の墓石が二基立ち、施餓鬼は峯の人々が毎年営んでいる。
原典より
土中の鐘の音は三日三晩続いて絶えてしまったので、人々は彼の遺言にしたがい、塚をつくってこれを葬った。—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 中(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 中(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成——分類と解説 中』は、韮塚一三郎が編んだ埼玉県の伝説集の中巻で、上中下三巻のうち歴史伝説を収める。地名・屋敷・家系・聖地・城や堤や橋・神仏・神体と宝物・偉業・事件と紛争の九章に分け、県内各地の伝説を『新篇武蔵風土記稿』などの文献と土地の人からの聞き取りによって集めている。一話ごとに所在地と出典または資料提供者を記し、同じ類型の話をまとめた後に柳田国男らの説を引く〈解説〉を置く。