飴を買う母の霊と夜泣き松の赤子
どんな伝承か
東松山市下唐子の夜泣き松の付近で飴を売っていた老夫婦がいた。秋の終り近いある夜、年の頃三十ほどの乱れ髪の、青白い病人のような女が一文の金を持って飴を買いに来た。生れたばかりの赤ん坊に乳が出ないので飴を与えるのだという。女は毎晩あらわれ、七日目の晩には金も持たずに来た。あまりの不思議さに跡をつけると、夜泣き松の無縁仏の墓場の付近で女の姿は消えた。その墓を掘り返すと、生後間もない裸の赤ん坊が泣きながら現われた。夜泣き松の付近から赤ん坊の泣き声がしたのはこの赤子の声で、飴を買いに来たのはその母であった。赤ん坊は飴屋の老夫婦に引きとられて育てられたと伝える。
原典より
あとで、その墓を掘り返してみると、生後間もない裸の赤ん坊がオギャア、オギャアと泣きながら現われたという。—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 中(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 中(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成——分類と解説 中』は、韮塚一三郎が編んだ埼玉県の伝説集の中巻で、上中下三巻のうち歴史伝説を収める。地名・屋敷・家系・聖地・城や堤や橋・神仏・神体と宝物・偉業・事件と紛争の九章に分け、県内各地の伝説を『新篇武蔵風土記稿』などの文献と土地の人からの聞き取りによって集めている。一話ごとに所在地と出典または資料提供者を記し、同じ類型の話をまとめた後に柳田国男らの説を引く〈解説〉を置く。