旅人の枕を北へ返す地蔵
どんな伝承か
日高市上鹿山の小さな寺、西光寺には、枕返し地蔵と呼ばれる木彫の地蔵が安置されている。昔、一人の旅人が寺を訪れて一夜の宿を乞い、庫裡が狭いため本堂に泊められた。旅人は南を枕にして眠ったが、朝目覚めると北枕になっていた。疲れて寝返りを打ったのだろうと思い、もう一晩泊めてもらって同じように寝ると、翌朝もまた北枕だった。旅人はようやく、仏に足の裏を向けて寝た非礼に気づき、詫びて香と花を手向け、礼を述べて去っていったという。
原典より
翌朝眼をさましてみると、寝た時と違って北枕に寝ていた。—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 中(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 中(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成——分類と解説 中』は、韮塚一三郎が編んだ埼玉県の伝説集の中巻で、上中下三巻のうち歴史伝説を収める。地名・屋敷・家系・聖地・城や堤や橋・神仏・神体と宝物・偉業・事件と紛争の九章に分け、県内各地の伝説を『新篇武蔵風土記稿』などの文献と土地の人からの聞き取りによって集めている。一話ごとに所在地と出典または資料提供者を記し、同じ類型の話をまとめた後に柳田国男らの説を引く〈解説〉を置く。