夜ごと畑を荒らした慈光寺の名馬
どんな伝承か
ときがわ町西平の慈光寺の観音堂には、左甚五郎の作という馬の像が鉄の鎖でつながれている。この馬は夜になるとこっそり抜け出して付近の畑を荒らし、時には二里も三里も遠くまで出かけた。百姓たちは不審に思っても、まさか名馬の仕業とは考えなかったが、やがて夜になるとあの馬が姿を現すという噂が立った。ある夜、百姓たちが方々に分かれて隠れていると、案の定その馬がのっそりと近づいてきた。たび重なる被害に怒った百姓たちは尾を切ったり口元を鉄鎖で縛ったりして観音堂に納め、以後畑は荒らされなくなったという。
原典より
慈光寺の観音堂には左甚五郎作という馬が、鉄の鎖でつながれている。—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 中(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 中(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成——分類と解説 中』は、韮塚一三郎が編んだ埼玉県の伝説集の中巻で、上中下三巻のうち歴史伝説を収める。地名・屋敷・家系・聖地・城や堤や橋・神仏・神体と宝物・偉業・事件と紛争の九章に分け、県内各地の伝説を『新篇武蔵風土記稿』などの文献と土地の人からの聞き取りによって集めている。一話ごとに所在地と出典または資料提供者を記し、同じ類型の話をまとめた後に柳田国男らの説を引く〈解説〉を置く。