顔を隠して踊る女ばかりの盆踊
どんな伝承か
旧暦盆の月夜、小子内の村では板橋の向こうから女の声が高く響き、曲り角の共同井戸の前の街道で盆踊が始まった。太鼓も笛もなく、踊るのは女ばかりで男は見物の役である。長く立って見ている者は輪の中から手を出されて引き込まれ、次の一巡りにはもう一心に踊っている。踊子はみな白い手拭で顔を隠し、帯も足袋も揃いの真白で、紺無地の前掛には今年から金紙で家の紋や船印を貼りつけたという。月がさすとその飾りが光り、楽器がなくとも踊は眼の音楽であった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第2巻』は、柳田国男の紀行と旅の随筆を収めた著作集の一巻である。昭和三年一月の自序に続く「雪国の春」や菅江真澄の日記を読み解く文をはじめ、東北の村々の正月、火と炭、浜の暮らしの見聞、「秋風帖」「東国古道記」、昭和十五年十一月の自序を持つ「豆の葉と太陽」などの紀行を並べる。峠や古道、佐渡・五箇山・熊野などの土地を、住む人の暮らしと信仰から見ようとする文が多い。