祭の日に若王子山に上る細い煙
どんな伝承か
ボンのような漂泊の人々について書いたくだりで、著者は京都での見聞を添えている。物静かな京都の人々がこぞって踊るような祭の日にも、著者は若王子山の松林に細い煙を上げている者がいるのを見た。これは斉明天皇紀に見える朝倉山の鬼と同じたぐいで、少しばかりはどうにも仕方がなく、世の人々は長いあいだそうした者を大目に見てきたのだと著者は述べている。祭の喧騒から離れた山の林に、人知れず暮らす者の気配があったというのである。
原典より
物静かな京都人が全部踊つたやうな祭の日にも、私は若王子山の松林に、細い煙を擧げて居る者の有るのを見た。—— 定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第2巻』は、柳田国男の紀行と旅の随筆を収めた著作集の一巻である。昭和三年一月の自序に続く「雪国の春」や菅江真澄の日記を読み解く文をはじめ、東北の村々の正月、火と炭、浜の暮らしの見聞、「秋風帖」「東国古道記」、昭和十五年十一月の自序を持つ「豆の葉と太陽」などの紀行を並べる。峠や古道、佐渡・五箇山・熊野などの土地を、住む人の暮らしと信仰から見ようとする文が多い。