通り抜けの岩屋に石仏が並ぶ願の賽の河原
どんな伝承か
外海府の願にある賽の河原は、島を巡る巡礼の人々がとりわけ心をこめて拝んでいく霊場である。もとは西北に口を開いた深い岩屋だったらしいが、いつの世かの風浪で背後の山が崩れ、いまは通り抜けになって、わざわざその中を通るように道がつけてある。前には地蔵堂が建ち、大小無数の石仏が穴の内外に転がっている。石を積む風習も盛んだが、それは旅人の道心によるもので、あたりには一軒の家もない。柳田は、ここが中古の葬地の跡であったらしいと考えつつ、島の人にはなかばあの世のように信じられていると記す。
原典より
願の塞の河原は島巡禮の人たちが、殊に心を留めて拝んで行く靈場であつた。—— 定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第2巻』は、柳田国男の紀行と旅の随筆を収めた著作集の一巻である。昭和三年一月の自序に続く「雪国の春」や菅江真澄の日記を読み解く文をはじめ、東北の村々の正月、火と炭、浜の暮らしの見聞、「秋風帖」「東国古道記」、昭和十五年十一月の自序を持つ「豆の葉と太陽」などの紀行を並べる。峠や古道、佐渡・五箇山・熊野などの土地を、住む人の暮らしと信仰から見ようとする文が多い。