岬の草生地に群れ咲く野生の蝦夷菊
どんな伝承か
浜に咲く花は他にもいくらもあったろうが、大抵は今は忘れている。わずかに残った記憶の中を捜すと、男鹿の突角の高地、八戸の後の山、津軽の十三潟の出口の野などでは、無数の蝦夷菊の野生を見た。花の丈は二三寸から五寸まで、淡々とした草生地に、この花のみが踏むほど多かった。紫は至って淡く、少し遠ざかれば葉の色と一つになった。町では花畠に植えられて大きくなり、紅白いろいろの変種もできたが、同じ名で呼ぶのを見れば故郷の地も推測される。まだ見ぬいずれかの海辺にも、こうして美しく咲き満ちた処があるのだろう。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集)
柳田国男編『定本柳田国男集 第2巻』を全331話・伝説(1見出し=1話)単位で収録(緒言・序・名義・解説・和歌・注は除外/内包)。所在地(郡村区・社寺)を付して集成。